速きこと豚の如く

明後日の方向に使えるムダ知識

シュガー・ラッシュ:オンラインは正しい教育アニメだ!

気付けば2018年も終わり、新年も半月を過ぎた頃ですね。こんちは、豚速です。久方ぶりのブログ更新です。
この豚速、歳をとる度ピクサー映画を見るのが怖くなります。例えるなら、子供の頃から何気なく摂取していた料理が、実はとんでもない工夫と叡知の結晶した最高級のフルコースであったことに、成長と共に徐々に気付くからとでも言いましょうか。架空の社会のほんの一要素を構成するために、類い稀なイマジネーションが限界まで振り絞られていることが、妄想好きの端くれとして痛いほど理解できるんですね。
シュガーラッシュ・オンラインもまた、「もう少し肩の力を抜いても誰も怒らないよ?」と言ってしまいそうな、そんな創作に対する真摯な姿勢に溢れた逸品でした。そしてそれ以上に、ほんの少しの皮肉と溢れんばかりの悪ふざけに彩られた極上のジャンクフードでもありました。こんなの子供に見せていいのかしら?私は声を大にして言います。いいんです。以下、満足するまで語っていきたいと思います。ネタバレ嫌な方はここでブラウザバック推奨です。

(1)ヴァネロペが可愛い


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君と初めて出会ったのは、忘れもしない大学一年の夏、僕が初めて海外へ向かったときの飛行機の中だったね。今回、シュガーラッシュを見に行った理由の8割は君に会うためだったんだよ。一目見たときから、僕は君に夢中だったんだ。
素朴な黒髪と後ろに束ねられたテール、とってもキュートだね。子供服のイデアをそのままキャラに落とし込んだような可愛い服も、デフォルメされた身体にピッタリ似合っているよ。主張の激しい少し太めの眉毛は常に釣り上げられて、君の勝ち気な性格を代弁するかのようだね。君は常に勝負に真剣で、勝利に貪欲で、そして生意気だ。君の人を馬鹿にしたような冷めた目を、表情を思い出す度に僕の胸に熱いものが込み上げ、思わず身を震わすんだ……。でも、僕は知っているよ。生意気な仮面は君の仮の姿。本当の君は実はとっても見た目相応で、繊細で、傷付きやすく、友達を失うことをひどく恐れているんだね。はぁ僕がゲームの世界に入れたら、安心するまで君を抱きしめてあげr……

(2)恐るべきはディズニーマジック

みたいな僕の本音とは全く関係のないネットの闇の一例を、ピクサーは驚くほど器用に自らの世界観の中にデフォルメして落とし込んでいるんですね。僕ぁ、ヴァネロペちゃんがいつ自分のエロ画像とネットの海で鉢合わせやしないかと半ば本気でヒヤヒヤしながら観ていましたよ。ディズニー映画でありえないだろって?いや、そんな危惧を本気でしてしまうくらい、今回の映画はかなりスレスレなとこまで踏み込んでいたと、僕は思いますね。
例えば、ポップアップ広告を路上のキャッチに見立ててる。風俗店のあれです。興味ない人の前に看板おっ立ててしつこく迫る感じとか、双方に共通する特徴をしっかり描写してて感心しました。ブロッキングをしているユーザーはどう表現されるかというと、ボディーガードがキャッチをドンと突き飛ばして「安心してネットをお楽しみください」と言うわけです。いちいち比喩が的確。ちょっと空恐ろしく感じたのは、皆、意外と気軽に広告をタッチしてリンクに飛ぶんですね(ちなみにこの『リンクに飛ぶ』は、押した瞬間小型の輸送ポッドが自分の周りに展開され、それに乗ってひとっ飛びって感じで表現されてます。楽しいね)、さした内容への吟味もなく。当然主人公のラルフ達もネット初心者ゆえ(オフラインゲームのキャラなので!)、怪しいキャッチにもほいほい付いていってしまい、つくづく心臓に悪い。エロ動画欲しさにリンクを踏んだ経験のある人なら誰でもあそこでヒヤヒヤしたんじゃないかな。
これに限らず、この映画はとにかく皮肉に満ちたユーモアが物凄い。特にディズニーのファンサイトの世界に行くパートがあるんですが、そこなぞもう版権帝国を着々と築きつつあるディズニーの開き直りとも言える有り様。スターウォーズやマーベルのファンから見れば「悔しい……でも感じちゃう!」って感じですマジで。ディズニープリンセスあるあるネタやり始めたときは「こ、コイツ……他の映画制作会社どころか自分に喧嘩売り始めやがった……」って思いました。書いてて思ったけどデップーみてぇな映画だなこれ。
余談ですが、このシーンでディズニープリンセス達の砕けた態度や(現代風の)私服姿が見られます。超可愛いです。これだけで見る価値アリ。ファンサが凄い。
他、ふぁぼの数に踊らされるSNSユーザーとそれをタネに飯を食う人々など、最近の自分を鑑みてかなり耳の痛くなる隠喩も沢山盛り込まれております。それはとりもなおさず、僕の世代から見れば驚くほど低年齢の頃からスマホを与えられ、奔放な使い方をしてしまっている現代の子供への警鐘でもあります。異常な完成度のストーリーと映像美という、エンタメの本分をまっとうしてるおかげで全く説教臭く感じませんが、そういうメッセージもしっかり盛り込まれている。そこが、「シュガーラッシュオンラインは正しい教育アニメだ!」と言った第一の理由です。はい記事タイトル回収。

(3)あまりに上手すぎる「友情の最初の試練の描き方」

もう1つ、正しい教育アニメだと言った根拠として、「友情はお互いを縛り合うことじゃないよ、違う道を歩んでもいいんだよ」というメッセージを凄く上手に描いていることなんですね。これは映画のターゲット層である子供が陥りやすい袋小路で(大人もそういう人居るけどね)、だからこそ考えるきっかけになる。
ラルフが、「友達と無理矢理にでも一緒に居たい」という自分の悪い態度がコンピューターウイルスとして具現化されたのを見て、初めて自分の醜さを客観視し、自分の誤りを認め、ウイルス達に諭す。ラルフの中の歪みが解消されたことで、ウイルス達は自然と消滅する。暴力で無理矢理解決するのではなく、対話で分かり合うという友情のあるべき様子が、設定的根拠をもって描かれるあの流れはあまりに美しすぎました……。
またまた余談ですが、この時巨大なラルフ型ウイルスが腰を掛けるのは、Googleを意味するタワーの頂上です。Google scholarのトップに書かれた「巨人の肩の上に立つ」を思い出すとちょっとニヤけてしまうシーンですよね。

(4)おまとめ

とま、ネットの使い方を少し考え直すきっかけとして、友情の前に立ち塞がる最初の関門を乗り越えるための手掛かりとして、是非とも子供達に見て欲しい映画でござあました。シュガーラッシュ・オンライン。もちろん、卓越した演出・物語を楽しめ、ディズニーファンへのサービスにも溢れた娯楽映画の傑作ですので、大人の方々も是非とも足を運んで欲しい。つーか、ヴァネロペが可愛いんだから仮に駄作だとしても見ろよ。ヴァネロペ可愛いよヴァネロペ。4DXでヴァネロペの香りに包まれながら果てたいだけの人生だった。